特集 患者の反応をとらえられない時
すべての患者は表現している—患者から学ぶ非言語的コミュニケーション
紙屋 克子
pp.922-927
発行日 1979年9月1日
Published Date 1979/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918764
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意識障害患者との初めての出会い
今でも鮮やかに思い出す1つの情景がある.昭和43年4月,病棟婦長の後に従い,初めて遷延性意識障害患者の部屋に入った時のこと.一斉に私たち(看護婦)の方を振り向いたのは,もちろん患者ではなく家族であった.希望のない,疲れきった家族の表情が迫るように何か訴えたげで,忘れることができない.そして,それとはまたあまりにも対称的な患者たちの安らかな寝顔に,言いようのないおそれのような感情をもったことも覚えている.
1人1人の家族の傍らに,いろいろの方向に顔を向けて横たわる患者たちは,奇妙なバランスを保ってある世界を形成しているようであった.それはあたかも何かの拍子に別の世界を垣間見たときのように動悸を伴う強烈な印象だったのではあるが……
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