特集 看護するなかの‘慣れ’
体験レポート
来し方を振り返るなかで
西山 和子
1
1国立高知病院
pp.498-502
発行日 1979年5月1日
Published Date 1979/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918672
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はじめに
編集部より〈看護するなかでの‘慣れ’〉という表題をいただいとたんに思い浮かべたことは,‘自分の過去の失敗や未熟な看護の仕様を人様の前にひろうするのだろうか’という不安であった.というのは,現実の場で看護を行ってみると,それはどのような立場であれ場所であれ,ほんの小さな看護場面の1つ1つにも,それを行う自分の人間性というか,自分の持っている価値基準というものが,それら1つ1つの行為の裏から,あたかも‘衣の下からよろいがのぞく’ように,隠しようもなくのぞいてくるものであり,その度に不確かな自分の価値基準や,うすっぺらな人間性を突き付けられて自己嫌悪に陥り,自信を失うことの繰り返しのような日々を経験しているからであろうと思う.
しかし,この表題をあらためて考えてみるとき,‘自分が看護に行き詰まりや挫折を感じたのは,いったいどんな時であり,それは日常のいわゆる慣れとどう関係するのだろうか’そして‘それを少しでも超えることができたと思えたきっかけは何だったのか,その時の場面やかかわった人との関係はどうだったのだろうか’と自分の通った過去の体験を繰り返し問うてみることにより,最初に感じた不安の意味が何であるかを確かめることができるのではないかと思えてきたのである.
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