ホームヘルパー跳びある記・9
ある拒食—死にいたる最後の自己主張
松田 万知代
1
1藤沢市役所‘老人いきがい課’
pp.101
発行日 1979年1月1日
Published Date 1979/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918595
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戦後,種々の福祉法が制定されて施策や対策が整備されていますが,これらは家族単位の福祉を志向するものであり,その家族の一成員である老人個々への援助は対症療法的で,それら老人を囲む家庭環境の調整も行われていないのが現実です.老人の精神的健康が家族内の対氏関係と深い関係があることは明らかで,老人の身体的諸変化とともに,家族との人間関係が老人の精神的老化を早め,神経症を誘発する重要な要因であることは多くの研究者によって認められています.老人対策は,家族の全体的な福祉と健康の向上を図るという視点から見直さなくてはならないでしょう.
しかし,家族を一単位として考え,治療の対象とすることは,精神病理学の面でも社会福祉の面からもほとんど考えられていません.なぜなら,八間は誰でも年をとれば‘頑固になる’もの,‘ボケてくる’ものといった通念が一般的にあって,老人問題が家庭内に起こるのは自然の成り行きであり,人々の関心が将来性のある可能性を有する子供に向けられ,将来性のない老人については期待してもしかたがないという風潮が強いからです.
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