‘私’と‘あなた’の対話・9
‘タテマエ’と‘ホンネ’
上野 矗
1
1大阪教育大学養護教育教室
pp.1285-1288
発行日 1976年12月1日
Published Date 1976/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918043
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はじめに
‘私’と‘あなた’の対話にまつわって,‘タテマエ’と‘ホンネ’ということがよくいわれる.‘タテマエ’とは表向きの言い分,‘ホンネ’とは本心だといわれる.私は最近,改めて痛いほど感ずるのだが,タテマエやホンネというのは,あらわれというよりも,そのあらわれの土台になっている私たち自身のありよう(構え)ではないか,いいかえると,‘私’が,‘あなた’が,いま,ここに,いるか否か,そういう私たちの身のおき方であるように思う.
こうしたありようが,これまで述べてきた対話成立にあずかる基本的な構えと,密接に関連していることは改めて述べるまでもない.そこで重複があるかもしれないが,以下,お伝えしてゆきたい.というのも,対話に際して,タテマエやホンネが問題になるのは,当人が,たとえばタテマエ的ありようをあらわしていながらも,そのことに気づけないため,対話に混乱が生じてくる場合が,しばしばみられるからでもある.
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