くすりの毒性・10
モルヒネ—薬物依存性
高橋 日出彦
1
1東京医科大学生理学科
pp.1085
発行日 1976年10月1日
Published Date 1976/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918001
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これまで述べてきた薬の毒性は‘一般毒性’とよばれているものです.この場合には,肝毒性・腎毒性・眼毒性・耳毒性など,特定の臓器に対する毒性が問題となります.毒性には,この一般毒性のほかに‘特殊毒性’とよばれているものがあります.この代表的なものの1つに薬物依存性(drug dependence)があります.かつては耽溺(たんでき)(addiction),習慣性(habituation)などとよばれていましたが,これらの用語は乱用され誤解に導くので,1964年WHO Expert Committee(WHO専門委員会)は‘薬物依存性’を両者の代わりに用いることを提唱し,現在ではこれが一般的になっています.
薬物依存性は薬物の周期的あるいは持続的使用によって生ずるもので,精神的依存性(psychogenic or psychological dependence)と身体依存性(physical dependence)があります.精神的依存性とはある薬の習慣的な使用をやめた時,その薬の服用に対して抵抗し難い欲望,あるいは衝動にかられることです.
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