マイ・オピニオン
医療の専門化のなかで
稲田 美和
1
1日本赤十字社医療センター7階東病棟
pp.1001
発行日 1976年10月1日
Published Date 1976/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917984
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患者の身体的問題にのみ目を向け,精神・心理的側面を軽視しがちであった状況を経て,全人的な患者の把握とそれに基づく看護ケアの重要性が叫ばれ,看護の概念的な展開には,ここ数年来,なんらかの進歩が感じられる.しかしながら臨床の場において,果たしてよりよい看護への理念が十分に実践されていると言えるであろうか.個々に異なる患者のニードに応じて,身体的あるいは心理的に偏りのない調和のとれた看護がなされているであろうか.
家族的な背景や心理的側面に問題があり,それが身体症状に現れ,切々と様々の症状を訴える患者や,落ち着きのない行動で看護婦に不快感を感じさせるような患者—つまり,一面的ではなく全人的なアプローチをしない限り,看護上の問題点を見いだしえず,また適切な援助もできないような患者に出会った時ほど,私たちが看護理論の実践の難しさを感じることはない.
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