特集 准看制度廃止への展望—看護の質の向上を目指して
矛盾の多い准看制度
干葉 幸子
1
1関西医科大学付属第2看護学校
pp.913-916
発行日 1976年9月1日
Published Date 1976/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917966
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はじめに
現代の健康や保健医療需要についてみると,健康に影響する諸要因も複雑多様化し,疾病構造の変化や国民皆保険制度の実施,一方で人口構造の急速な老齢化に伴って要療養者率も高くなっている.老人医療の無料化も重なり,医療需要は高まる一方である.この保健医療需要の高まりの一因には,人間活動の基本的要件としての健康についての価値感が,人々の意識の中に広まっていることが挙げられる.かけがえのない人間というものの認識や,健康の考え方などから,保健医療需要の多様化に対処するものとして,地域保健医療すなわち健康増進や疾病予防から,治療・リハビリテーションまでの包括医療体制が指向され,実施されることが急務となっている現状にある.また看護の立場からは,1人の人間を総合的に把握して,身体面はもとより,精神的な面と社会的存在としての人間を理解した上で,専門的に援助することが必要となっている.
一方,包括医療を遂行する場合は,それぞれの関係機関の医療関係者との連携が必然であり,人間関係の成立や調整も容易ではない.そしてこうした医療関係者のほとんどは,基礎学力として高等学校卒業程度のものを求めている.最近の中卒者の後期中等教育への進学率は,昭和50年で,男子91%,女子93%であった.
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