Nursing Study
一尿毒症患者の精神看護の試み
柏屋 信子
1
,
南 裕子
1
,
長谷川 淑子
1
1横浜市立市民病院内科
pp.92-96
発行日 1969年5月1日
Published Date 1969/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917606
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I.はじめに
およそ,私たち臨床看護婦が,日常の看護のなかで,非常に心を痛め暗くし,何とかしなければとあせり,そのあげくに虚無感に陥ち入るのは,死を予期された外見は比較的元気だった患者が,次第に悪化のみちをたどる,その人に対する精神面の看護ではないでしょうか。私たちの内科病棟では,そのような患者が常在しますし,そのなかでは,尿毒症患者が多く,40年度の死亡患者中,約3割を占めておりました。
尿毒症患者は比較的若い人に多く,またその症状の初期,その原因となります各種の疾患の段階では,自覚的苦痛が少ないものですから,患者とナースとの人間関係は平穏ですが,次第に悪化しますので,医療関係者すべてに不信を抱いて,ある時は事故退院したり,そうでなくとも今まで信頼して話していたその心を貝殻のようにとざして語らず,精神的な結びつきの切れることが多いのです。内科看護婦として,この問題は,ぜひ解決しなければと思っておりました折,ここにとりあげます,21歳の女子の尿毒症の看護と直面いたしました。この患者は,後述しますように精神的にも経済的にも恵まれず,最後まで,私たち医療従事者が彼女の支えとならなければならなかったこと,それだけに彼女と私たちの結びつきが最後まで切れなかったこと,逆に症状悪化のなかで,患者とナースの人間関係が深まったことで,印象の強い患者でした。
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