にっぽんふうぞく裁断
情報化社会の変化現象
亀谷 悟郎
pp.114-115
発行日 1970年7月1日
Published Date 1970/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917538
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太田ブームは情報頻度から
先月号で書いた“情報人間”の不安をもう少し現象的にみながら,次の視点に目を移してみよう。
ことし近鉄に入った太田投手は,カゲの契約金を含めて,1億円に近い金で入団したのではないかと囁かれている。だが,どうやら近鉄はこの太田君の人気によってオープン戦だけでその全額を回収した(?)とスポーツ誌(紙)に書かれた。さらに面白い現象が,パリーグ開幕の対東映戦で起きた。太田が出るか出ないかわからないとはいえ.“登板するだろう”という憶測だけで,3連戦のいずれもが3万人以上の観客をあつめた。昨年までは1試合1万人を越えれば上々だったパリーグにとっては,これは大異変といってよかった。野球人として,登板ないし出場しないで観客をあつめたのは,異例中の異例ではなかろうか?“太田選手のすべて”“近鉄の星”といったタイトルのグラフも開幕前に出て,かなり売れていた。すなわち太田は登板して職業野球の選手としての役割を果たさないうちにスターだったのである。おそらくそんなことはないだろうが,太田はもし真の実力がなく登板しなくても,ベンチでウォーミングアップをしたり,ショートリリーフをくり返すなどで,1年ぐらい近鉄の人気を保持できるだろう。
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