老人相談コーナーの目
いま,すぐ,できることから始めよう
田中 多聞
1
1東京都老人総合研究所
pp.704-705
発行日 1975年7月1日
Published Date 1975/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917289
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ゆで卵の温かさ
私はいま,伊豆の素適な病院に入院患者として居る,3階の病室からは,富士が眺められ,それにもまして病院・病棟の医師・ナースたちの心の温かさに,初めて本物の病院入院生活を満喫させてもらっている.本物の入院生活とは,検査・薬物療法のみの,いわゆる薬と機械で人を一方的に攻めつけないケアをいう.最高の診断治療,設備,患者2人に対してナース1人という恵まれた看護態勢だから可能との反論も出ようが,そうではない.ひとりひとりの医師・ナース・セラピストたちが病気よりも病んだ人を相手にしてくれるからである.
某日,昼食に生卵が出た.それを食べ残していると,若いナースが‘ゆで卵にしてきましょう’と言って,持って行った.30分後に‘遅くなって済みませんでした.熱いのでお気をつけください’と言って持って来てくれた.外泊日だった私は,ゆで卵を大事にカーディガンにくるんで,東京に持ち帰った.彼女の心のこもった卵はいま,私の机上にある.
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