2色ページ ホメオステーシス入門・10
細胞の中のホメオステーシス
畠山 一平
1
1北里大学医学部生物物理
pp.1112-1115
発行日 1974年11月1日
Published Date 1974/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917128
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
細胞レベル
今までの解説の中で,個体レベルあるいは細胞レベルという言葉を用いた.そして実例のほとんどは個体レベルに関するものであった.今回は細胞レベルについて述べる.もっとも,単細胞生物にとっては細胞レベル即個体レベルである.単細胞生物では,個体の生命維持は細胞単独の持つ生命力によって行われている.多細胞生物の構成要素としての細胞とても,自らの生命を自らの生命力によって維持していることは当然であるが,単独の能力だけではその外部環境の変動に耐えることが困難である.そこで個体を構成する細胞群の共同作業によって,‘内部環境’が細胞の生命維持に適するように維持される必要がある.この環境の恒常性維持こそ,ホメオステーシスなる言葉を提示したCannonが,その代表例として挙げたものであった.ところが細胞1個だけを取り上げ,そこにおける生命現象をよく調べてみると,多細胞生物の細胞群としての生命維持機構に比べてひけをとらぬほど見事なホメオステーシスが存在している.
単細胞生物とて種の維持のためには子孫を作らねばならない.そこに遺伝という現象が存在する.すなわち自らとほとんど同じ形態機能を持った子孫が作られる.それにしても子孫が祖先によく似ていなければならぬという必然性があるのだろうか.こんな疑問は一見素朴にみえるが,それへの解答は難しい.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.