2色ページ ホメオステーシス入門・1
ホメオステーシスとは何か
畠山 一平
1
1北里大学医学部生物物理学
pp.94-97
発行日 1974年1月1日
Published Date 1974/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916930
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からだの知恵
1932年,アメリカの生理学者 Walter Bradford Canoon(図1)は古典的名著“The wisdom ofthe body”を著した.彼はすでに年齢60歳を越しており世界的生理学者としての名声に輝いていた.彼の生理学的研究はX線像影法による消化管運動の探究から始まっているが,この研究はX線による消化管診断法の端緒となったものである.また,交感神経から伝達物質が分泌されるという重要な概念を,この著書の出版された前年1931年に発表している.
彼はこのような30年余にわたる生理学者としての経験に基づき,生体の持つ高度の調節能力を‘安定性’という点から見直すようになった.生体が生命を維持し健康であるための基本は,生体自身が自らの安定状態を維持する機構を持っていることであり,彼はこの機構をホメオステーシス(homeostasis)と名づけ,これこそ‘からだの知恵’であるとして,いくつかの例を挙げつつ生体の調節能力を論じたのであった.
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