2色ページ 人類遺伝学へのさそい・9
奇形はどのようにしてできるか(1)
西村 秀雄
1
1京都大学医学部解剖学
pp.988-991
発行日 1974年9月1日
Published Date 1974/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917102
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はじめに
医学の分野で先天異常の問題が近年とみに重視されるに至っている.実際,従来とり残されてきた対象であった,生まれつきの障害にかかわる症例が相対的に増してきており,我が国でもこれは乳児死亡の原因の第1位を占めるに至っている.また,子供を持とうとするどの親にとっても,このような障害児の生まれるリスクが皆無ではなく,特に近代文明に伴っておびただしい種類の化学物質が生活環境に取り入れられ,これらが催奇形因子となるのではないかという不安が異常に高まっている.
さて,先天異常とは何かを考えてみると,これは生まれつきの異常だといってよい.これには出生時に既に現れているもののみではなく,このときに潜在し,その後.一定の発育を経てから初めて現れてくるものもある.このうち奇形といわれるものはその一部で形に関するものをいう.この外,働きや代謝経路に関するものがあり,奇形とこれらをすべて包括して先天異常と呼んでいる.
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