視・聴・画
〈戦闘的映画〉の展開/自由な生活と生きがい/真の‘芸術’とは何か
松田 政男
1
,
青木 彪
2
,
梶 五郎
1「映画批評」
2「美術手帖」
pp.272-273
発行日 1972年2月1日
Published Date 1972/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916901
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1968年5月,パリ,いわゆる5月革命──ジャン=リュック・ゴダールは水を得た魚のように学生たちとともに街頭に出る.まず映画三部会に拠ってカンヌ映画祭を紛砕,次いでパリにとって返し,シネ・トラクトを撮りまくる.ゴダールにとって今やフィルムとはアジビラと同義だ.したがって,そのアジビラを集大成して「あたりまえの映画」と題する長篇ドキュメンタリーによって5月革命を総括したゴダールには,いささかの挫折感もない.ゴダールは若い同志たちとジガ・ヴェルトフ集団を形成し,世界に向かって旅立つのである.
その〈長征〉の記録—フランス→イギリス→チェコ→イタリア→アメリカ→カナダ→再びイタリァ→パレスチナ→再びアメリカそしてフランス.ゴダールらは自らの旅の軌跡をフィルムに定着し,言うところの〈戦闘的映画〉として全世界に提出する.そのうちの4本がわが国でも公開されたことについてはすでに述べた.しかし残念なことに,ゴダールらの旅のひとつの転轍点となるべき「パレスチナ・ゲリラ,または勝利の日まで」のみは未完成にとどまっている.この間の経緯については,1970年4月のインタビューでゴダール自身が述べたところを聞こう.
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