連載 医学と文明・8
発想の転換
水野 肇
pp.1060-1064
発行日 1973年8月1日
Published Date 1973/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916738
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価値の多様化時代の‘価値’とは
最近の日本の世相をみていると‘どこかが狂っている’としかいいようのないような事件が多い.それは単に政治の世界だけではない.あらゆる社会現象に混迷が現われている.文明が発達して,東京から札幌に行くのは,わずかに1時間10分ときわめて時間が短いが,同じ都内の南多摩郡の奥には3時間もかかる.早いはずの自動車が1キロ進むのに10分もかかり,自転車が車の間を縫うのがいちばん早いという状態である.
そうかと思うと‘スト権を奪回するためのスト’がうたれ,大多数の国民が迷惑をする.施政方針演説になかった‘小選挙区制’が国会の末期に提案されそうになってみたり,いつまでたっても学園内の革マル派と大学当局との話し合いがつかない。一方では‘大学院ごろ’というのがふえている.就職するのがいやで,大学院に残っているが,別に学問をするつもりがない.気をきかしたつもりで教官が‘就職の世話をしようか’と言うと‘とんでもない,就職がいやで大学院にいるのだから……’と言う.
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