連載 医学と文明・3
老人医療
水野 肇
pp.384-388
発行日 1973年3月1日
Published Date 1973/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916605
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この半年来,老人問題が急にクローズ・アップされてきた.1973年のテーマしとて‘老人年金’と‘老人医療の無料化’が行なわれることは確実になってきた.いささかおそきに失した感もあるが,それでも大きな関心と期待が寄せられていることをみても,前進であることはまちがいない.
だが,老人問題は,よほどよく考えてから実施しないと,大きな失敗をおかす危険性がある.老人年金のほうは,ともかく食べていけるだけの支給が行なわれることが最もたいせつなことで,そこに中心がおかれているかぎり,根本的な点であやまちをおかすことはないと思うが,老人医療のほうは,そうはいかないのではないかと思う.老人医療を無料化することによって,老人医療は安心だと考えるとすると,それはきわめて危険なことだといわねばなるまい.
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