医療への提言・4
老人問題をどうとらえるか
水野 肇
pp.73-76
発行日 1976年10月1日
Published Date 1976/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206046
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寿命は伸びたか
これから21世紀にかけて,日本にとって最大の課題は「老人問題」である.日本のように急激に"老人大国"に突入する国は世界でも初めてのことである.しかし,老人問題の認識は,国はもちろん,医療関係者の間でも必ずしも十分ではない.主として経済の角度からのみとらえられているが,もっと広く,深く考え,ユニークな施策を展開しないと,日本全体が老人の重みで圧迫されるようなことになりかねない.これをうまい形で処理し,前向きの老人大国にするためには,老人医療について正しい認識をもたねばならない.そのためには「老化」という現象をはっきりと見つめる必要がある.
寿命が伸びたというのは確かに間違いのないことである.そして人々は,だれもが昔の人に比べてはるかに長寿になったと考えている.ところが実際にはそうではないのである.一定の年齢(70-75歳)まで生きる人の数は増えたが,1人の人間が長生きするということではないのである.ここには2つの問題があって,ひとつは国全体が老人国になりはじめたということ,もうひとつは人間の寿命はさして変らないということなのである.
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