今月の主題 内分泌疾患の新たな展開
早期診断へのヒントと診断の進め方
バセドウ病
葛谷 信明
1
1筑波大学臨床医学系・内科
pp.390-391
発行日 1985年3月10日
Published Date 1985/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219647
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バセドウ病は内分泌疾患の中で日常臨床の場で出会う頻度の高い疾患の一つである.「バセドウ病の主要徴候は,頻脈,甲状腺腫,眼球突出,手指振戦でありこれほど診断上気づかれやすい疾患は他には少ない.しかし問題となるのは,症状が軽度にまたは部分的にしか発現していない患者である.しかも,そのような症例は決して稀ではない.」と有名なWilliam Oslerが1892年に教科書に記している.今世紀に入って,病因論の研究が進み,疾患概念がより明らかになり,検査技術も新しく開発されてきたが,バセドウ病の診断に関してはOslerの指摘が今日でもあてはまると思われる.バセドウ病は家族的,体質的な要因(疾患感受性など)が背景にあり,発症後長期間持続する疾患で,病因は現在も不明だが,自己免疫機序が重要な影響を及ぼしていると考えられる.通常,中心的な症状は血中甲状腺ホルモン増加による代謝の亢進によるものだが,眼や皮膚に独特の症状を伴うことがある.これらの症状は必ずしも同時には認められず,個々の患者により症状の組み合わせも症状発現の順序も様々である.バセドウ病の早期診断を正しく行うためには,バセドウ病の典型例ばかりでなく非典型例の病像も知る必要があり,また発症過程を示唆すると考えられる患者家族の甲状腺機能の異常も参考になる.診断の進め方については,特にdestructionによる甲状腺機能亢進症との鑑別が重要である.
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