病態栄養学概説・6
各種病態における治療栄養の実際—3.臓器の形態および機能の異常
榊田 博
1
1日本バプテスト病院
pp.786-789
発行日 1972年6月1日
Published Date 1972/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916356
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一般的方針
臓器に手術侵襲が加えられる場合や外傷.熱傷はもちろん,外科的疾患以外でも消化性潰瘍・炎症・変性による組織の欠損・断裂など臓器の形態の変化は,栄養学的には組織蛋白を主体とする物質的欠損と表現できる.これらの補修には組織再生の素材として体蛋白の生成を必要とするので,栄養の重要性を増す.
潰瘍面の創傷が深く進行したり,手術侵襲の範囲が大きくなると,大量の出血,穿孔などの合併症を伴ない,出血による蛋白喪失・貧血・急性循環器障害およびしばしば高窒素血症状態になることがある.病変が消化管に及ぶと局所の変化のため嘔吐を頻発し,食事摂取を妨げ栄養障害を起こす.とくに外科的手術では単に術後の栄養だけでなく,術前の栄養状態も手術の適応,術式の選択,侵襲範囲,術後の回復状況などに大きな影響を及ぼす.また臓器の切除・摘出などによる消化吸収障害,肝臓における合成機能低下あるいは分解亢進などが栄養障害の経過を慢性化し悪循環におちいる.また外科領域においては諸代謝が急激に変動するので,栄養の適否はすぐ患者の生命に影響をもたらす.
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