臨床薬理学・6
バルビツール酸剤
保刈 成男
1
1日本大学医学部薬理学
pp.782-785
発行日 1972年6月1日
Published Date 1972/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916355
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バルビツール酸の由来
バルビツール酸(マロニル尿素)は,マロン酸と尿素の縮合したもので,1864年,当時ケクレのもとで研究助手をしていた29歳のアドルフ・フォン・バイヤーによって合成された.
バルビツール酸という名の由来にまつわるエピソードがいくつかある.その1つは,ベイヤーは,砲兵士官達がよく集まる近くの居酒屋へ行っては新化合物の合成について思いめぐらすのが常だった.待望の新化合物のできたちょうどその日は,士官達の守護神の聖バルバラの祝日に当たっていたので,この化合物に聖バルバラの名を冠したというのである.もう1つは,尿素誘導体の合成に心血を注いでいたベイヤーには,多量の尿素が必要だった.このことを伝え聞いた友人のバルバラ嬢は,“お役にたてば”と健気にも自分の尿を実験材料として提供した.そのかいあって彼は新誘導体の合成に成功した.彼は感謝の意をこめてバルバラ嬢の尿を材料にして作った有機酸という意味でバルビツール酸と名付けたという.
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