特集 差別のなかの患者処遇—身障者・精神病者・らい者
患者の処遇と精神医学
西山 詮
1
1東京都立墨東病院神経科
pp.25-30
発行日 1971年5月1日
Published Date 1971/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916018
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はしがき
精神医療の歴史は医者や看護婦の見解と業績の年代記であってはならないであろう。患者が総体としてどのように処遇されてきたかという見地からみて,はじめて医療の歴史が現われるのでありこれをぬきにしては,医者や看護婦の得手勝手な構想が医学史や看護事業史として語られるにすぎない。
医療は医者ないし看護婦のものと考えるのは救いがたい先入見の一つである。なるほど医者や看護婦は医療を行なうであろう。しかし医療を行なうのは医者や看護婦に限られない。精神医療についていえば,医療を構成するのは,換言すれば患者を処遇するのはまず家族であり向こう三軒両隣りの人びと(場合によっては自警団的組織ともなる)であり,職場の人びと,ついでしばしば警察であり,最後に保健婦,看護婦,医者である。医療スタッフは患者の処遇者を構成する一小部分にすぎないし,時間的にも患者の処遇にもっとも遅れてたずさわる人びとなのである。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.