患者とわたし
もし大通りを帰っていたら
石塚 洋子
1
1元長野県S市立病院
pp.98-100
発行日 1970年5月1日
Published Date 1970/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914885
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通称,ヤマちゃんこと山○幸○さんは38歳になるのだが,年よりはずっと若く見える。長い病院生活で世間を知らないせいだろうか。病気になる前は東京の一流会社のエリート社員だったそうだ。だから自分のことを「ぼく」といい,きれいな標準語でしゃべる。「気分はどうですか?」と聞くと,いつも少し照れたようなにが笑いをする。「だめだなあ!あんまり変らないよ。」そしてちょっとニヒルな感じをただよわせて首をすくめてみせる。
「ぼく退院したらもうふつうの仕事にもどれないだろう?だから複写画を描いて売ろうと思うんだけど……」そういってユトリロの風景画などをクレパスで複写している。
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