老景十二話・10 〈老い〉の中に世界が見える
帰る
三好 春樹
,
三好 京
pp.1195
発行日 1986年10月1日
Published Date 1986/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921552
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‘ちょっと帰ってきます’と,Fさんが風呂敷包みにまとめた荷物を持って言う.
‘どこに帰るん?’‘そりや自分のうちだよ,お父さんお母さんのいる’Fさんは既に80近い.もちろん,お父さんもお母さんもずっと前に亡くなっている.‘何しに?’‘農繁期だから帰って手伝わなきゃ’自分の齢は判らなくても,不思議と“農繁期”は当たっている.季節はちょうど刈り入れ時で,園の回りには稲の波が続いている.
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