医学と看護
再生不良性貧血
五十嵐 忠平
1
1国立栃木病院内科
pp.29-35
発行日 1969年12月1日
Published Date 1969/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914704
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はじめに
再生不良性貧血は比較的わが国では多くみられる悪性の貧血である。悪性の貧血とは治療のむずかしい貧血という意味であって,いわゆる悪性貧血ではない。悪性貧血とは一般には巨赤芽球貧血のことをいい,これはビタミンB12の発見によって治療の道が開かれた。面白いことに悪性貧血は欧米に比較的多く,わが国には少ない。逆に再生不良性貧血はわが国に多く,欧米に少ないといわれる。その理由は不明であるが,あるいは人種の差によるものかもしれない。このほかに化学薬品や放射線によって続発性に再生不良性貧血を起こすことがあるので,今後ともこの種の貧血の増加する傾向は世界的に認められており,注目さるべき疾患の一つになっている。
なお再生不良性貧血の英語名はaplastic anemia,ドイツ語ではAplastische Anämieであり,直訳すれば無形成貧血となるが,以前は再生不能性貧血という言葉が好んで使われたが,治癒に向かう症例も認められているので,小宮(昭10)により再生不良性貧血という病名が提唱されて,現在広く使われている。
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