現代のカルテ
時代の青春
野口 肇
pp.48
発行日 1967年6月1日
Published Date 1967/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203416
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わたしは熊本の旧制五高に学びました.東京五高会という同窓会があり,年に一度,休日の百貨店の大食堂を借りきって宴会をもちます.これには自衛隊のブラスバンドがきて校歌など演奏し,いまの佐藤首相など先輩名士たちがスピーチをします.故池田前首相もやはりそうです.
そのさいいつも気づくことは,国会答弁や施政方針,あるいは正式の記者会見のときとちがい,佐藤さんたちの表情がいかにも明るく,まるで学生時代にかえったようなほがらかさです.笑顔もけっしてつくったものでなく,別人のように実にうれしそうです.なぜそうか?佐藤さんでいえば,在学当時は日露戦争です.ご承知のとおり日露戦争は,新興国で資本主義の上げ潮だったわが国が,末期症状にきていた帝制ロシアにたいし,一かバチかの戦争をいどんだ時期でした.文字どおりの挙国一致,無名の日本は世界最強を誇るロシアに完勝しました.
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