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シリーズ/霊長類ヒト科—逃避
pp.115
発行日 1968年7月1日
Published Date 1968/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914066
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その昔,醜悪なる俗世の現実をのがれ,中国の賢人たちは竹林に酒を汲み交わしつつ世の政争を高まいなる口ぶりをもって批判したという。はたしてその古事にならったのかしらん,同好の士集いて森林に分け入り,竹筒に酒を汲み,山菜をたしなむ,俗称竹寺の図である。
ところで人間という動物,一見葦のように弱そうでいて,なかなか。自然に対して立ち向かい抗がってこれを組み伏せ,自らのものにしてきたのは人間だけである。白然と対立するものは人間だけである。それかあらぬか,人間,生活に多少のゆとりができ,己れをふりかえり,その自らなせる業のいかに空しく,浅ましいものであろうかなどと分別がましく思いめぐらしはじめると,とたんに対立物たる自然に愛着をおぼえ身を寄せたくなるものであるらしい。
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