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シリーズ/霊長類ヒト科—喪失
pp.106-107
発行日 1968年8月1日
Published Date 1968/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914102
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わずかながらも土地を買い、家をたてようと思う。ぎりぎり人間の住みうる範囲を建坪にとられて、あとには猫の額ほどの余分の土地も残らない。それが今流行のマイホーム、マイハウスのおおよその実態だとすれば、あなたにささやかながらお庭の一隅を、と売り出したデパートのあくなき商魂は、案外とマトを得ていたのかも知れぬ……。
ところで、文学好きのあなたならたぶんロスト・ゼネレーションという言葉はよくご存知であるに違いない。「失われた世代」──第一次大戦でアメリカから欧州に出征した若い世代は、戦後帰米してみて、はじめてアメリカに文化的伝統の欠けていることを痛感し、自己の精神的故郷を求めて、ある者は再び欧州に、またある者はアメリカそのものにさまようことになる。そしていずれもはたせずに終わり、アメリカ文壇には故郷喪失のエレジーが歌われるようになる。主なる歌い手はヘミングウェイ、ドス・パソス…──などとものの本に書いてある。
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