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シリーズ/霊長類ヒト科—情熱
pp.114-115
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914250
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“恋に苦しみ,恋に泣いて……”岸洋子が切々とその恋情を謳いあげる「酔いしれて」。以前,恋は人間復権を告げるものだったそうな。幸わせな幸わせな時ではありました。かにかくにわれらの時代ははや,恋の美酒もくめぬ時となりぬ。ましてわれら大和男子は「原始時代,女性は太陽であった」とのたもうたこともなく,男性復権はひそやかな思いにこめられていたのであります。かつて,透谷は,藤村は,復権を女人との契りに求めやんぬるかなの寂寥感。所詮おいらはの鶴千代ばりのポーズをとりつっ,遂にはシビアな世界へと転々。ああげに,はかなきは男心よ。花は桜木人は武士!大和魂よ!男の中の男よ!とあがめたてまつられたのがそもそもの失敗。九郎判官義経ならぬ,苦労包含止常と,起きがけのみそ汁一杯。そこでそれ「パパはママを可愛想と思わないの」という愛嬢の声を背中に聞いて、「義理がすたればこの世は暗よ」の綱走番外地。
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