特集 老人医療費無料化の影響
社会福祉病院と老人医療
近藤 六郎
1
1社会福祉法人・有隣病院
pp.42-45
発行日 1973年12月1日
Published Date 1973/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205181
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世界有数の長寿国となったが……
周知のごとく,人口の老齢化は,戦後急テンポで進行した.戦前は確かに人生50年だったが,最近厚生省の発表したところによると,日本人の平均寿命は,ついに男70.49歳,女75.92歳というように,スウェーデンなみの世界有数の長寿国となったわけである.よくいわれるように,こういう日本の現状は,西欧で1世紀もかかったものが,戦後わずかに1/4世紀の間に達成されたという進展ぶりである.
しかし,その中身を検討してみると,昭和30年以降の出生率の低下もさることながら,乳幼児の死亡と,結核死の著しい減少が主要な原因であって,老齢者の平均余命というものはそのわりに延びてはいないし,その死亡率も罹患率も,若年層に比して,それほど顕著に改善されているわけではない.いわば,底の浅い速成の長寿国だから,たんなる思いつきや,人気とりではなく,地道に腰をすえて老人福祉に対処しないと,将来とんでもない困難にぶつかることになりかねない.それはもちろん,新幹線の新設延長や,週休2日制の実施などと同じレベルの福祉政策と考えたら大まちがいで,まったく異質のものだからである.
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