クリニック・アイ
五月
木島 昻
1
1木島医院(小児科)
pp.89
発行日 1967年6月1日
Published Date 1967/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913187
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昨日,近所の患家の主婦から,手製の人形を貰いました。「お蔭様で大事もなく兄の方は小学校を,妹は幼稚園をそろってこの春卒業しました。これは……」と言って,そのお母さんは恥しそうに風呂敷包みの中から人形をとり出し,診察室の机の端に置きました。黒い漆塗りの木台に,糸錦の着物を着せた木目込みの童子がすわっている人形で,平安朝の優雅な気品が漂っていました。その家の二人のお子さんは別に手のかかる大病をしたというわけではなく,ごくありふれた病気で外来の頻度も普通でした。もともと近所づき合いの患家ですが,だからといって親しさに便乗して患者の無理を押し通すふうもなく,いつも歴然と外来の順番を待つという家族です。
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