看護の椅子
アタタカみある人間看護婦に
江戶家 猫八
pp.13
発行日 1967年3月1日
Published Date 1967/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913060
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戦時中,看護婦サンのことを“白衣の天使”といっていた。今でもそのフンイキは残っている。天使はともかくとして,白衣,私はどうもこの白衣なるものが余り好きではない。ナゼカッテエト(江戸ッ子なので文章が時々ヘンテコリンになりますがお許しください)白は清潔だなんていうけど冷たいな!!雪は真白だ,雪やコンコンあられやコンコン……中略……猫はコタツで丸くなる 雪もこの程度,空は青く野山は白く太陽の光がアタタカくなんてところまでならよいかも知れないが,それこそ雪山で吹雪にでもデックワしてごらんなさい。まさに恐怖そのものだ。
はなはだ申し訳ない話だが,病院はその白が多すぎる。病室の壁は白く,シーツも毛布のオオイも白,お医者サンから,看護婦サン,受付の人に至るまで白装束,小さな子供がお医者さんの白衣を見ただけで泣き出す。床屋のオヤジサンを見てもこわがる気持がわかるような気がする。私なんぞは病院へお見舞いに行って,消毒薬のニオイをかいただけで,心臓がドキドキする。よっぽど気が小さいのに違いない。それというのも,終戦間際の8月6目,広島でピカドン(原爆)を喰って復員,本郷の帝大病院(今の東大)の先生から,“お前は白血球が2000以下になった……今のトコロどうしようもない”と見はなされ,それ以来自分の体に自信が持てなく,最近やっとのことで元気になったが,今もって病院はニガ手である。
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