連載 ナースのための心理学入門 総論・1【新連載】
心理学的なものの考え方
高木 隆郎
1
1京都大学医学部精神科
pp.77-81
発行日 1966年10月1日
Published Date 1966/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912907
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1.こころの科学
わたしたちは,日常〈人のこころ〉とか,〈こころをもっている〉とか,あるいはまた〈本を読む〉というのと同じように〈こころが読めた〉というようないいかたをします。また「顔で笑って心で泣いて」などともいいますが,こうした表現はすべて,〈こころ〉を肉体とか,あるいは物質的ななにかあるものと対立させているわけで,つまり,精神と物質という2つの「概念」の対立において,精神と概念を位置づけさせようとしているのです。
ところで,〈精神〉とか〈こころ〉が,あくまでも「概念」であるならば,これらは哲学とか,認識論の範囲で議論されればよいことで,心理学にとって,さほど重大な問題はのこしません。しかし,もし,〈こころ〉が,単なる概念—意味をもったことば—である以上に,「実体」として,世の中に存在するのであるとすると,それは心理学にとって大問題となってきます。
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