特集 待ち時間解消はどこまでできるか
“待つ”“待たされる”の心理—病院の待ち時間に関する心理学的考察
松田 文子
1
1広島大学教育学部心理学科
pp.726-730
発行日 1996年8月1日
Published Date 1996/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901875
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
一様に流れる物理的時間に対して,心理的時間は縮んだり伸びたり,人により状況により複雑に変化する.日常生活の中でどういうときに,なかなか時間がたたないと,あるいは時間がとても長いと感じられるか,考えてみよう.「人を待っているとき」,「おもしろくもない講演を聞いているとき」,…….では逆に,どんなときに時間がアッという間に過ぎるか,あるいは時間が短く感じられるかを考えてみよう.「原稿の締め切りに追われているとき」,「飲み屋で同僚と話が盛り上がっているとき」…….
こうしてみると,心理的時間は,早く過ぎ去ってほしいときにはかたつむりのようにノロノロ進み,ゆっくり進んでほしいときには矢のように飛んでいく,大変皮肉な性質の持ち主のようである.そうすると,病院の待ち時間というのは,実際の時間以上に心理的には長く感じられる宿命なのではないか.取り組む相手はなかなか手ごわい.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.