カンボジア看護紀行・5
生活条件とその疾病
手柴 房子
1
1国立東京第一病院手術室
pp.80-81
発行日 1966年8月1日
Published Date 1966/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912844
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ビタミン欠乏症に頭を痛める
これは広義のビタミン欠乏症と申しましょうか,栄養バランス失調症とでも申したらよいでしょう。とにかく当センター内科のトップをいくほど多い疾病で,脚気,角膜乾操症,夜盲症,口角炎をはじめ,ありとあらゆるビタミン欠乏症といわれる疾患がみられるようです。しかし私たちが,10か月間滞在してみて,どうしても納得がいかないのは,生活範囲のどこを見まわしても,果物類が豊富で,オレンジ,マンゴ,バナナ,パイナップル,パパイヤなどの他に日本では味わったことも見たこともないような多種類にわたり,いつでもたやすく食せられ,特に当センターのあるバッタンバン州というのは,果物,特にオレンジとお米の産地として有名なところですが,どうしてこのように多くのアビタミノーゼの患者がいるのでしょう。この現象は当センターばかりではなく,プノンペンの隣町カンダール州タクマオというところの保健所を訪れた所,そこの保健所長が,やはりアビタミノーゼ対策には頭を痛めている。自分は周囲の果物や野菜を摂取するようモデルの野菜や果物を使って指導している,と話しておられたが,恐らくこれらの人びとにとって,果物や野菜は生活の手段として手離すことが多いため自分たちの食卓には上らないのか,または1日2食ぐらいしか食事をしないための摂取不足かでしょう。
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