カンボジア看護紀行・4
診療開始当日のにぎわい
手柴 房子
1
1国立東京第一病院手術室
pp.50-51
発行日 1966年7月1日
Published Date 1966/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912801
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□□□ダフ屋まで現われた診療開始当日□□□
診療開始当日の興奮は今さら申し上げるまでもなく,以後毎朝7時半の整理番号札渡しの騒音とともにその日が始まります。雨期が明けた後は,毎朝雲一つない澄みきった青空が,人びとの目覚めを待ち受けているのです。私たちよりずっと早起きの現地人たちは,6時頃から一人二人とセンターの庭先に集まり,7時を過ぎる頃は,優に100人を越える人出となっているのです。この人びとは,センターのある部落内はもとより,近所隣の部落や,60kmも離れた州庁所在地でしかも州立病院もあるバッタンバン市や,隣の州の州庁所在地であり,また「アンコールワット」で世界的に有名なシムレアップ市などから百数十キロの行程を,また中にはもっと遠く350kmも400kmも離れた主府プノンペンやその先の州から出かけて来るのです。お金持の人びとは自家用車を飛ばして来ることもありますが,ほとんどが,バスを借りきって1団体となって病院通いをしたり,遠い人びとはバスや汽車で泊りがけの何日かの旅を続けてきたり,始発の一番バスを利用したり,川上や川下の部落からカヌーで川を下ったり上ったりして来る人びともあります。また前日に到着して,センターの前の川原にヤシの葉で急造の背振小屋を作って泊りこんでいる人びとなど,その努力,これほどまでに彼らは医療にうえているのでしょうか。
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