特集 婦人労働からみた看護
現代婦人労働の動向と展望
一番ケ瀬 康子
1
1日本女子大
pp.14-17
発行日 1964年10月1日
Published Date 1964/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912397
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増加する婦人労働者
ここ10年来の婦人労働の動向で特徴的な点は,つぎの3点であろう。まず第1に,いちじるしい数の増加ということである。現在,約800万の婦人労働者がいるといわれているが,それは,10年前の約2倍である。第2には,ともかせぎ婦人の増加という点である。それは,年々増加の一路をたどり,今日,全体の21.7%(1962.9)という数字をしめしている。もっとも,これは,規模30人以上の企業における割合であるから,既婚婦人がより多いといわれているそれ以下のものもふくめたら,およそ30%にはなるであるう。さいきん発表された厚生省の家庭児童調査によると,児童のいる家庭の母親の約55%(1962.9)は,就労していると発表されている。そのなかには,農業労働や家内労働のものもふくまれているからであるが,子どもをもってなお働いている婦人の数は,決してすくなくないといえよう。第3の点は,婦人労働の質にかんしてである。以上の諸点が,表面的には婦人の地位をたかめ,一見婦人の職場進出をはなばなしく見せかけてはいるが,なかみは,決してよろこぶべき状態ではない。あいかわらず,婦人の職種は,下積みの単純不熟練職種が圧倒的に多く,しかも,それに傾斜した増加傾向をしめしているにすぎないのである。そして,さいきんの合理化の動きは,ますます,婦人を下層労働者,低賃金労働者として,おしとどめようという動きを強くしているのである。
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