特集 勞働衞生最近の進歩
婦人労働
齋藤 一
pp.69-71
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201490
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女子の身体は脂肪組織が多く,筋肉の発達も劣る。更に体重心は女子の骨盤発達と腰部皮下脂肪沈着の多いため,活溌な運動には不利な条件にある。基礎代謝量は,細胞の活動水凖を示す生物学的示標と考えうるものであるが,これを単位体表面積当り単位時間内の発生熱量としてみても,男子36.7Calに対し女子は34.8Calで低い。筋力を示す握力では10〜15kg,背筋力では60〜70kg肺の機能の大小を示す肺活量では500〜1000ccほど女子が男子にくらべ少い。
また女子の下腹部臓器の解剖学的構造は,会陰部の支持力を弱めているから,腹内圧を高めるように作用する重量物の支持や運搬の作業では,特に女子に性器下垂やその他性器位置異常が起るおそれもあり,男子に比べて不利である。第1図は同一重量物を種々の方法で運搬する場合の男女のRMR(エネルギー代謝率)を比較実験した結果であるが,同一重量に対するRMRは女子に高く現われるばかりでなく,重量増加に対してエネルギー需要の増す割合も,女子が大きく,更にエネルギー需要が急増してエネルギー経済の上から著しく不利となる。重量の限界も,常に女子が低いところにおかれている。実驗結果から女子の重量物運搬において問題となる限界重量を運搬方法別に男子と比較して示すと,下表の通りである。
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