特集 看護の合理化
現代の合理化と婦人労働
田中 寿美子
pp.14-17
発行日 1964年5月1日
Published Date 1964/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912233
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「日本の働く人にとっていちばん大きな問題は何ですか?」とよく外国へゆくとたずねられる。すると日本の労組の代表はきっと,「合理化反対のたたかいです」とこたえる。あるとき私はソビエトの工場を視察していたが,やはり仲間の日本の婦人労働者のひとりがそう答えた。そしたらソビエトの労働婦人はけげんな顔をして,「産業の合理化や,生産性の向上,機械化やオートメ化は私たちが,たえず心がけていることです。できるだけ生産をあげることがのぞましいのです」と言った。そこで私は,資本主義体制の下では,生産性の向上も,合理化も,オートメ化も,資本の利益を最大限にあげることが目的で,しばしば労働者のぎせいにおいてそれが強行されるので,日本の働くものは合理化反対運動をせざるを得ないのだということを説明せねばならなかった。説明をきいて納得した,ソビエトの若い労働者のひとりは別かれるとき私の肩をたたいて,「けれど,機械は大切なものです。こわさないでくださいよ。将来役に立ちますからね」と言ったので,私たちは大声で笑った。
この話を考えてみていただきたい。本来,技術革新だの,合理化だの,生産性の向上だの,機械化,オートメ化だのということは,抽象的に考えれば,それ自体大そう立派なことだ。人類の頭脳はすすみ,技術は発達する。人間の肉体や腕をつかわなくても,機械がかわってできる仕事なら機械にさせるのはよいことにきまっている。
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