特集 看護婦と注射
静脈注射の過失は看護婦の責任か—山形の看護婦静注事件について
高田 利広
pp.14-18
発行日 1963年11月1日
Published Date 1963/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912054
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■山形の看護婦静注事件の概要
また,静脈注射による不幸な事件があり,患者は右腕肘部より切断のやむなきに至り,静注をした看護婦は,罰金1万5千円(執行猶予2年)に処せられ判決確定をみた。事件の概要はこうである。
Kは山形県立S病院産婦人科勤務の看護婦で,医師の指示により患者に注射を行なうなどの業務に従事していたところ,昭和35年1月11日産婦人科医長T医師の指示により,患者Nに対する優生手術のためその右肘部に静注用全身麻酔薬オイナール5ccの注射を行なった際,Nが肥満していて肘部静脈の発見が困難な状況であったので,その旨を医師に報告し医師自ら注射するよう取り扱うか,もしくは,あらためて指示を求めて適当な方法のもとに静脈なることを確認し誤りなく注射するなど,万全の措置を講じ薬液を静脈以外に注射することにより生ずる危害を未然に防止する業務上の注意義務があるにもかかわらず,これを怠り医師に対する報告もしないで慢然とNの右正中肘動脈を静脈であるごとく軽信して薬液を動脈血管内に注射した過失により,Nをして正中肘動脈の斂縮に基づく血行障害のため,右腕の肘部より指先までの組織を壊死せしめてその部分の離断のやむなきに至らしめた(1審判決山形地裁新庄支部昭和36年5月22日,2審仙台高裁昭和37年4月10日執行猶予となる,3審最高裁昭和38年6月20日棄却,確定)。
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