連載 道拓かれて—戦後看護史に見る人・技術・制度・6
看護婦と注射—静注,筋注の安全性
川島 みどり
1
1健和会臨床看護学研究所
pp.584-587
発行日 1997年6月1日
Published Date 1997/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905368
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小児病棟の朝
昔から子どもが病院嫌いになる原因の1つに「注射」があるだろう。大人でさえ看護婦は注射をする人という印象をいまだに持っている場合が少なくない.注射は,非経口的与薬手段として医療技術のなかでかなりの頻度で行なわれていてきわめてポピュラーな技術である.ところが,本来あってはならない医療や看護事故のなかでも,注射の事故はあとをたたない.
1950年代の半ば頃,こずえが勤務する小児病棟には,ほかの産院や病院で生まれた未熟児が入院してくることもめずらしくなかった.1950年代といえば乳児死亡率がまだまだ高かった頃である.1954年にWHOから,わが国の早産児対策に保育器が贈られたことが看護史にも残る時代である.現在のようなNICUがないどころか,保育器すらもないのが普通であったから,いわゆる生命力薄弱といわれる乳児を,その子の月齢にふさわしい平均体重にまで大きくすることは,小児看護の大切な目標でもあった.まさに生命力を消耗させないためのケアが求められていた.
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