臨床検査とその介助
膵臓の臨床検査
坂田 泰昭
1
1東大田坂内科
pp.58-63
発行日 1960年12月15日
Published Date 1960/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911222
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1.はじめに
膵臓は上腹部の深部に横に走る細長い臓器で,頭部,体部,尾部の3つに分けられ,臨床的に屡屡問題になる頭部は,十二指腸に囲まれていて,この部には膵臓管があつて輸胆管と合流して十二指腸に開口している(第1図)。膵臓の働きは外分泌機能と内分泌機能とに分けられる。膵臓の外分泌液即ち膵液は水様透明で1日に約1lが分泌され,この中には蛋白質を分解する酵素(トリプシン,エレプシン)含水炭素を分解する酵素(ジアスターゼ)脂肪を分解する酵素(リパーゼ)等食物の消化に不可欠の種々の酵素が含まれている。胆汁と同じく十二指腸に食物が入つて来ると反射的に分泌される。内分泌機能としてインシュリンというホルモンが膵臓から分泌されこれの欠乏が糖尿病を起すことは広く知られている。膵臓の臨床検査法には,いくつかのものがあり,たしかに膵疾患の診断に役立つてはいるが,肝臓における肝機能検査の如き有用な方法はない。機能検査法が不充分であることと膵臓自体が腹腔の深部にあつて外部からの理学的所見がつかみにくい事とのために膵臓疾患の診断は総じて非常に難しいといわなければならない。
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