ナースの作文
母につながる径,他
田湯 良子
1
1北海道利根別労災病院
pp.66-69
発行日 1960年9月15日
Published Date 1960/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911170
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勤務後2, 3の友と連れ立つて,初夏の小径を散歩する。私の勤める病院は,街より3キロ程の郊外の丘に建つている。病院の周囲は田や畠が多く,歩く小径も殆んど人影もない程である。夕刻とは云え未だ明るい日射しのもとで,無数に黄色いタンポポが咲き乱れている。街は目の下に広く拡がり,大きなバスが丘の路をゆつくりと降りていくのが見える。
この小径がつきるところに少し下つて,静かな沼が沈んだ色を見せてくれる。このタンポポの小径が沼へ伸びる散歩路を私はこの上なく好きだ。丘につづいて自衛隊の庁舎がまるで絵で見たカリフォルニアの風景を思わせる。大きな給水タンクと2本の煙突は,強い意志を示して青空を截り,クリーム色のモダンな建築は緑の周囲の林にかこまれて彫られたように建つている。横を見ると私達の病院が白亜の6階の雄姿を美しく絵のように見せてくれる。
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