2頁の知識
経口BCGワクチンについて
室橋 豊穗
1
1国立予防衛生研究所
pp.30-31
発行日 1959年6月15日
Published Date 1959/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910867
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BCGの創始者であるA. Calmetteが人体に用いた最初の方法は,経口接種法であつた。当時,結核の初感染が乳児時代に於ける生牛乳の飲用ばよつて腸管を介して行われると考えられていた為に,その感染の起る前にBCGを接種しておけば,局所免疫的な意味からも有効であろうと考えたようである。この考え方は現在では全く否定されているが,フランスを始めとしてラテンアメリカ諸国には,Calmetteの方法は根強く浸透している。その原因は,1つには接種に当つて疼痛もなく,注射法と異なつて局所に潰瘍を作らないという点にあるが,1つにはBCG接種に携る医師の絶対数が少い為に,看護婦や助産婦でも接種しうる方法が国情によつては必然的に要求された為である。
Calmetteは,液体BCGワクチンの30mgを3回に分けて,生後10日以内の新生児に,牛乳に混じて10mg宛3日間飲ませる方法をとり,之によつて乳児の結核による死亡を著しく低下せしめえたと報告した。然し,新生児期をすぎた乳児や幼児では,この接種量ではツ反応も陽転しないので,恐らくは新生児期に於ては,腸の透過性が高い為にBCGが吸収されて,効力を発揮しうるのであろうと考えた。経口接種はその後,北欧諸国や我国などでも追試が行われたが,何れもその有効性に疑問を懐かざるをえない成績をえたので,一層有効な皮下法から皮内法,更に経皮法,之と接種法が変つて来た訳である。
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