講座
カビの話
飯塚 広
1
1東大応用微生物研究所
pp.49-52
発行日 1959年6月15日
Published Date 1959/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910872
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1.カビの国日本
6月頃になると台湾や揚子江流域に発生して北東に進んだ低気圧は,北太平洋の高気圧と北海道や三陸沖の寒冷な空気とによつて,その進行をさまたげられて,本州,四国,九州一帯に停滞します。これが日本に独得な雨期,すなわち梅雨の季節をもたらすわけで,この季節になるととかく我々の身辺にカビが目にふれるようになつて来ます。
それは,このカビとよばれる一群の生物が,その1つ1つは顕微鏡ででも調べないとよくその形も分らないほど微小なものであつても,そのまわりの環境が自分に都合のよいようになると,つまり気温が高くなりまた湿度も高くなると,食物ばかりでなく衣類や皮革や家具や書物,さらに壁やガラスにまで目に見えるほど繁殖して来るからです。
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