講座
医学実験用サルについて
田中 利男
1
1国立予防衛生研究所獣疫部
pp.28-32
発行日 1959年3月15日
Published Date 1959/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910809
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実験医学の分野に於ては,直接人体を実験研究の対照とすることが望ましいのであるが,実際問題として,それには道義的な問題は勿論のこと,遣伝的体質及び環境による大きな個体差という障碍がわざわいして人体を医学研究の実験材料とすることにはおのずから限界が生じてくる。そこで人体に代るものとして,実験動物が医学研究に実験材料として登場する様になつた。
この場合においても,実験成績に常に動物の個体差・環境の影響によるバラツキがついてまわり,実験によつては,大まかな成績しかよみとることが出来ない場合が多かつた。しかし近年Littleにより,近交系動物(兄弟姉妹交配20代以上続け,遺伝子が99.4%以上固定した,同じ様な個性をもつた一群の動物)が実験医学に導入され,飼育管理法の改善と共に,実験に健康ないろいろな生理的特徴をもつた動物(ある特定の薬品,微生物,腫瘍,ストレス等に対し強い感受性,抵抗性を示すもの)が,均一な環境条件下で使用される様になつて,精巧な化学天秤が化学分析に導入されたと同様,より精度の高い実験研究が行われる様になり,劃期的な成果があげられるようになつてきた。
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