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実験講座
サルの行動に関する心理学的実験法
Experimental study on the primate behavior in psychology
室伏 靖子
1
Kiyoko Murofushi
1
1京都大学霊長類研究所心理研究部門
pp.251-255
発行日 1974年6月15日
Published Date 1974/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902999
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はじめに
従来,心理学では,知覚,学習,記憶,思考,欲求,感情,社会などの分野に分かれ,それぞれの分野に特色ある研究方法が案出されている。しかしいずれにしても,われわれが観察しているものが生活体の行動である以上,それらの分野に関係するすべての心的機能はつねに働いているわけである。知覚の実験で,実験者は生活体に与える入力(input)として,知覚過程に効果をもつと考えられる環境条件を実験変数として操作し,他の条件はできるだけ一定に保つことを試みるけれど,出力(output)としての行動は,必ずしも知覚過程のみの変化を示しているとは限らない。たとえば人間の場合に,"ここを凝視して,光がついたらすぐにスイッチを押しなさい"と教示するように,知覚のテストにも言語や運動学習がつねに含まれている。動物の場合は,実験者である人間と直接コミュニケートする言葉がないので,主として条件づけの手続きで,長期の学習過程をへて,はじめて知覚実験が可能になる。すなわち,知覚過程は実験者によつて実験結果から抽出され構成されるものである。
そこで,動物の行動の実験的研究に欠くことのできない学習の問題について考えるならば,それは従来,古典的条件づけ,道具的条件づけ,弁別,運動学習,迷路などに分類されている。しかしここで注意すべき点は,これらは用いられる手法の種類であつて,学習行動に対する考え方ではないということである。
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