講座
放射線障害
梅垣 洋一郎
1
1信州大学
pp.17-21
発行日 1959年3月15日
Published Date 1959/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910806
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はじめに
近代のすばらしい放射線医学の発展のかげには多数の放射線医学者,物理学者,技師の諸氏の血のにじむ様な苦労があつた。放射線という危険なものを扱うのに初期の学者や医師は何も防ぐ手段を持つて居なかつた。ラジウムを発見したキユリー夫人が放射線の障害による貧血のだめに生命を失われた事は,夫人の功績が輝しいものであるだけに悲痛極まりない所である。キユリー夫人の他にも放射線医学の研究のために生命を失つた人々は100人以上もあり,生命を失わずとも障害に苦しんだ人の数は無数である。この人々の尊い犠牲により建設せられた放射線医学は今では医療のすみずみ迄行きわたつてその恩恵を受けない人はないといつてもよい。最近の放射性同位元素の医学的利用の進歩にともなつて今後ますます放射線を医療面に使用する機会が増加すると考えられるが,よく放射線障害と実態とその防止法を知つてこれ以上1人として障害に苦しむ人を出さない事こそ我々の責任であり又先人の努力に報いる途であろう。放射線は唯恐れるべきではなくて正しく取り扱われるべきものである。
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