教養講座 小説の話・27
〈宮本百合子〉
原 誠
pp.46-48
発行日 1958年12月15日
Published Date 1958/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910753
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まず簡単に,彼女の履歴をたずねてみることにしましよう。
明治32年2月生れといいますから,川端康成とおなじ年に誕生したことになります。父親の中条精一郎は,日本有数の建築家で,北海道帝国大学をはじめ,数々のすぐれた建物を設計した人です。百合子が6歳から9歳くらいまでのあいだ,その父親はイギリスに遊学しておりました。いわば,非常に裕福な知識人の家庭に生れ,また明治の末葉から大正初年にかけて生育したのですから,古風な良家の子女のたどる道を生きていくのが自然だつたのかもしれません。が,中条百合子は幼ないときから,非凡な才能をもつておりました。
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