Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
宮本輝の『錦繍』―過去からの自由
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.586
発行日 1997年6月10日
Published Date 1997/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108408
- 有料閲覧
- 文献概要
宮本輝の『錦繍』(昭和57年,新潮社)は,知的障害を伴う脳性マヒ児を抱えた母観が,別れた前夫との間で取り交わす書簡から構成されている作品であるが,そこには,現在を真摯に生き抜くことで,過去や運命を乗り越えるという視点が示されている.
この作品のヒロイン勝沼亜紀の息子は,先天性の障害児で,下半身が不自由だけでなく,同じ8歳の子供と比べて2,3歳知能が遅れていた.子供の障害を知った時の彼女の悲嘆は一通りのものではなかったが,それでも彼女は,息子を養育する過程で,過去の呪縛から脱却しうる次のような認識に達する.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.