医学の話題
麝香,他
X
pp.40
発行日 1958年7月15日
Published Date 1958/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910643
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中国の北部,チベツト,シベリアの一部の標高1,000ないし2,000メートルの山地に麝(Moschus moschiferus)という小鹿に似た可憐な動物が棲息している。この牡の生殖器のそばに卵形の嚢があつて,この中に軟膏状の軟塊となつて分泌されているものがすなわち麝香であり,独特の苦い峻烈な香を発する。この臭は雌を誘惑するものと考えられるが,動物の世界では香は性と密接な関係がある。
人間の体臭を決める主なものは腋臭,俗にワキガがである。これは腋窩にあるアポクリン腺という特別の汗腺がよく発達しているといわれるが,最近では腋窩皮膚の表面の細菌が香の発生に関係しているともいわれ,細菌を例えば水銀剤のような殺菌剤で殺せば香も消えると主張する人もいる。ともあれ,ワキガの程度は人によつて著しく異り,アイヌは80%以上,白人は70%,台湾人は50%,日本人は10%韓国人は6%,中国人は3%でツングースにはほとんどないそうである。このように白人ではワキガはざらにあり,むしろ挑発的な効果があるというが,日本人では縁談や就職の支障となることがあり,手術を受ける人が多い。しかし将来日本でもワキガが珍重されるようになるかも知れない。
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